ピースリングツアーガイドブック2024~新たな基地課題を追う~

神奈川県には、1952(昭和27)年の平和条約発効時、米軍基地が162か所、約3,590ヘクタールありました。その後、 県・市・地元の基地返還運動により、 整理、 縮小、返還が進みましたが、今なお12か所、面積にして約1,738.6ヘクタールに及ぶ米軍基地があり、沖縄に次ぐ第2の基地県と呼ばれています。

多くの基地施設が在日米軍と自衛隊の共同使用となっており、住宅地が取り囲む中や観光地に広大な軍施設が存在する様相は脅威を禁じえません。

軍用機は航空法の最低安全高度規制、迷惑飛行規制を受けずに飛行できるため周辺住民はその轟音や墜落の危険性と常に隣り合わせでした。

軍港である横須賀では、原発1基分もの原子炉を備えた原子力空母などによる放射能漏れと思われる事件は繰り返し起こっています。

神奈川ネットワーク運動は、平和を重んじ神奈川県内の基地を巡りその実態を多くの参加者と共有し、基地の整理縮小を目指すツアーを展開しています。今回、2015年以降休止していたピースリングツアーガイドブックをリニューアルします。この9年間、県内では基地の機能強化や新たな課題も出ています。

 

その最たるものがPFAS汚染問題です。全国の基地周辺の水質汚染の原因として考えられている、PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)はPFAS(ピーファス)に分類される化学物質です。いずれも有機フッ素化合物に分類され、自然界で分解されにくく残留性、毒性が高いという特性も持っており、体内に蓄積すると、がんの発症や胎児異常などを引き起こすおそれがあることがわかっています。

神奈川県内でも横須賀基地内の排水から暫定目標値を超えるPFOS等が検出され、座間市でも米軍基地周辺にある河川や水源、井戸から国の暫定目標値を超えて検出されています。厚木基地周辺でも2010年から製造・輸入が原則禁止されたにも関わらず引地川では高濃度の有機フッ素化合物が検出され、2022年9月、有機フッ素化合物(PFAS)が大量に漏出した事故が起こっています。直近では、相模原市内の地下水や河川水から高濃度で相次いで検出されていた報道も記憶にあるかと思います。

神奈川ネット議員時代、議会質問をし意見書も提出しましたが市内の汚染源は特定されておらず、検出されたPFASの成分にばらつきがあり、知見を集めているとのあいまいな答弁に落胆しました。

今回、2024年4月琉球新聞が2022年 厚木基地で大量漏出した泡消火剤流出事故の詳細を報道した記事に衝撃を受けました。事故処理を誤っただけでなく兵士らは防護服なしで作業させられていたのです。

2016年厚木基地内での泡消火剤流出事故(ジョン・ミッチェル氏)

2022年厚木基地内格納庫で起きた泡消火剤流出事故(ジョン・ミッチェル氏)

上の画像は2016年米海軍厚木基地の格納庫で放出された泡消火剤放出事故の処理の画像です。下は、2022年 厚木基地で格納庫からPFOSが大量漏出、事故処理に当たった画像ですが、報道では、この時15人ほどが体調不良を訴えてとあります。これはそのまま周辺住民の健康被害や命の軽視にもつながります。

調査を進め、PFAS問題の周知、基地の縮小と核兵器廃絶を訴えていきます。

H・K